FILE2 異界 デモ


虫どもの巣から逃げ出したはいいが
幸運もそこまで

しばらく先で列車は止まった
仕方なく街へと退却さ

…この展開も、そろそろ飽きたぜ

どこまでも続く闇は
我々をあざ笑うかのようだ

わずかな時間進んだ列車は
街を出ることなく止まり…

抱きかけた希望をなぎはらった

地下鉄のことを知らない連中は
勝手に期待するさ

このままカッコよく
街から脱出?冗談じゃない

そう都合よく
線路は続いてないよ

努力は必ず報われるわけではない

今回はあの虫から
逃れただけでもよしとしよう

安堵の眠りは、まだ遠い…

…地上も地獄、地下も地獄

同じ地獄なら
まだ外のほうがいい

このムシャクシャした気分を
ゾンビどものツラにぶつけてやる

あそこにいつづけられるのは
よほどの虫好きか…

命とひきかえにスクープが欲しい
無謀なジャーナリストだけね

あたしはもうゴメンだわ

暗がりの中にあるのは
不安や恐怖ばかりじゃない

あの虫たちはきっと
それを知っていた

だけど人間は闇を恐れる…
その理由からも逃げつづけて

息苦しさからは
少し解放されたけど

結局は一時しのぎ…

街の外はまだ遠いわ
気合を入れなおさなきゃね

またこの風景か…
何度こんなことを繰り返す?

いや…悲観的になるのはよそう

やるべき事はわかってる
しぶとく生きる…それでいいんだ

久しぶりに見上げた夜空は
重い雲が覆っていた

妻と息子も
この空をどこかで見ているのか

頼む…無事でいてくれ
俺は必ず生きて戻る

あいかわらず遠くからは
ゾンビの声が聞こえてくるけど…

地上のほうが
まだマシな気分だね

あんな「職場」はもうイヤだ
満員電車どころじゃないよ

状況を冷静に判断できること…
私自身の長所ではある

だがたまに、それが不要だと
思う時もある

もっと楽観的になれれば
こんな時も希望が持てるのに、と…

この街はすっかり
血と腐臭が染み付いた

どこにいてもやつらの声が
低く地を這っている

せっかくの誘いだ…
出会えばいつでも切りつけてやるさ

行動は迅速に…
それが記者の原則

常に次の一手を読んで
キビキビと動かなくちゃならない

不運の理由を考えるなんて
一番後回しでいいわ

たまった疲れが
足取りを重くする

だけど生きている
だからこうして歩き、考えられる

なにも感じなくなった時…
それが本当の終わり

まずはここがどこかを
把握しなきゃね

きっとまだ街の外じゃないはず

嘆いたり落ち込んだりは
ちゃんと生き残ってからの話よ