第17章 カメラタイプの調査1


まず段階として、カメラタイプの研究が必要であることがわかった。
このカメラタイプをうまく使いこなすことによって様々なカメラワークを生み出すことができる。
しかし、その特性を完全に理解することが難しい。
カメラタイプとは、各INDEXに対して、カメラをどのように動かすかを定義する値である。
その値は、1〜9の整数であり、データ上次の場所に格納されている。

各INDEX内で判明しているデータ

カメラタイプは、今までの解析で漠然とであったが、1がカメラ固定モードで2がカメラが移動するモードと解釈していたが、他のタイプがよくわからなかった。
つまり、カメラタイプを理解しないと、様々なアレンジが難しいのである。

例えば、カメラ位置を変更したりする場合に起こりえる問題を示すと次のようなことがある。

よく起きる問題1 カメラがとんでもない位置になってしまう

例えばであるが、カメラ固定モード(カメラタイプ1)を、カメラリニアモード(カメラタイプ2)に変更した場合、カメラタイプ1は、カメラ位置1の座標がらカメラ焦点1に対して、撮影するが、カメラタイプ2は、キャラクターの移動きにあわせて、カメラ位置2とカメラ焦点2へ移動する。
もし、カメラ位置2の座標が正しい値でない場合やカメラ焦点2の座標が正しくないと、とんでもない場所からとんでもない場所を撮影してしまうのである。

下記はデフォルトの設定である。プレイヤーが移動して
もカメラが問題なく追従している。
下記はカメラ位置2のデータが正常な値ではないのでプレ
イヤーが移動すると、カメラ位置2の場所が、とんでもな
い位置に移動してしまう。

このような事を防ぐ場合は、カメラ位置1と2およびカメラ焦点1と2の座標を正常な値(プレイヤーが常に画面に収まり、かつ、移動した場合でも正常な画面になる値)に調整が必要となる。

よく起きる問題2 カメラが壁などに埋もれてしまう

これも「よく起きる問題1」と同様になるが、プレイヤーの移動により、カメラ位置をダイナミックに移動させたりした場合に、気づきにくいところで、カメラが壁や物体などに埋もれてしまい、画面が壁や物体の中に入り込み、ブラックアウトしてしまうような現象である。

下記は、画面左後ろにプレイヤーが移動した際に、カメ
ラが壁を突き抜け、プレイヤーが見えなくなる現象であ
る。
下記は、左記の問題を解決するため、カメラ位置の座標
を変更して調整し、カメラが壁の中に埋もれないように
した結果である。

よく起きる問題3 対象の人物がカメラから外れてしまい見切れてしまう

これもよくありがちな問題である。
カメラアングルを変更したり、カメラの移動距離を広げたり、狭めたりした時やカメラの焦点位置を変更した場合で、プレイヤーが移動した際、画面外にプレイヤーが移動して画面から見えなくなる現象である。
映画やテレビなどでは「画面外に出てしまうこと」を「見切ってしまう」などと表現したり、対象物(人物)が画面外から現れたり、画面外に出ることを「フェードイン」や「フェードアウト」ど表現し、演出として効果的に使用されるが、ゲームではプレイヤーが画面に映らなくなることは、操作ができなくなるという致命的な問題が生じる。

下記はデフォルトの設定である。
プレイヤーが移動してもカメラが問題なく追従してい
る。
下記はカメラタイプを変更した場合に、よく起きる問題
である。プレイヤーが移動すると、プレイヤーが画面外
に出てしまい、「見切れ」が発生する。


よく起きる問題4 角度によって建物がペラペラとしたセットのようになってしまう

ほとんどのデータは3Dの立体的なデータで描画されているので、カメラアングルを変更してもそれほど影響を受けないのだが、まれに建物などが実はペラペラのべニア板みたいなものがあり、角度を変更すると、建物が立体的に見えず、まるで映画のセットのような「作り物」のように見えててしまうことがある。
また通常のアングルでは見えない物が胆略化されているものもあったりするため、それが画面に映るようになると変な物として見えてしまうことがある。
建物の中は、四方八方が壁や天井や床があるので、まずはそのような感じがしないのだが、屋外は画面に収まるところはしっかくりと作られているが、画面外は簡略されていたりするので、カメラアングルを変更すると、見えなかったものが見えるようになったりするおかけで、「変なもの」が見えたり、簡略化された物体がペラペラとした立体感のないものに見えてしまうことがある。

下記はデフォルトの設定である。
特に問題はないのがわかる。
下記は、左記のアングルを変更したものである。
左側の建物と扉の部分に隙間が発生していることがわか
る。また上部の屋根みたいなものがありそれが宙に浮い
て変な表示になっている。

このようなことが見つかる場合は、もう少しアングルを変更し、うまく綺麗に見えるような修正が必要となる。

よく起きる問題5 カメラ位置と光源の問題

アウトブレイクシリーズは、カメラの位置と動きを決めてから光源の設定をし、人物がどの画面においても、ハッキリと見えるように調整がされている。
これは、StuntmanSnake氏が保存していたCAPCOMのオフィシャルの設定動画を観るとよくわかる。


このようにカメラの位置にあわせて人物と背景がハッキリと見えるような状態に調整していることがわかる。
つまり、カメラ位置を変えてしまうと、本来は、この光源の調整を変更が必要となるが、その光源の座標などのデータがどこにあるかまでは解析ができておらず、解析と変更は難しいため、光源の再調整はできない。

従って、カメラアングルを変更すると、逆光や光源のズレが生じてしまう。
しかし、それはそれで良い味を出しているともいえる。

下記は変更前であり、光源と画像は一致している 下記はカメラアングルを変更した結果である。光源の調
整はできないので、顔や体が暗い感じがする
下記は、記憶のデフォルト位置でカメラアングルは変更
していない。
下記は、そのカメラアングルを変えて、逆アングルにし
てみた結果である。逆光となるため、プレイヤーの顔が
よく見えない状態となる。これはこれで良い味がでてい
る。しかし、「見えて欲しくない物」が見えてしまうこ
ともある。

逆アングルやアングルの大きな変更による「逆光」についての問題は、今のところ解決策がないが、場合によって起こる「見えてほしくないものが見えてしまう」問題は、アングルの変更の微調整によって解決していくしかない。

上記の例は、一例であり、細かいことを言い出すともっと様々な問題が生じる。
それらを解決することと、さらに様々なカメラアングルを作り出すにあたり、カメラタイプの変更が効果的ではないかと推測していた。

そこで様々なシナリオの様々なエリアで使用されているカメラタイプを分析し、各値を変更するとどのようなことが起きるのかを解析する必要が生じた。
また前章で動画を作成し、Youtubeに上げたところ、すかさずMr.Creamy氏が反応し、新たに情報提供をしてくださり、理解できなかったことが見えてきた。
その結果、次のことが少しづつわかってきた。

まずは、理解がしやすい感じがするカメラタイプ1,2,3,4および9を確認することとする。

カメラタイプ1   カメラ固定モード

カメラ位置1の場所から焦点1を撮影するモードである。
カメラの移動はしない。
カメラ位置2の座標データと焦点2の座標データは、無視される。
狭いエリアなどでINDEXの区切り幅がせまく、扉の前や行き止まりなどの場所でよく使用される。
バイオハザード(初代),2,3で使われていたタイプで、プレイヤーが移動するためびに様々なアングルで撮影されていた。しかし、アウトブレイクでは、そこまで細かい区切り(INDEX)は存在しないため、扉の前や行き止まりなどで効果的に使用されている。

カメラ
位置1
カメラ
位置2
焦点
位置1
焦点
位置2
X
Y
Z
X
Y
Z
X
Y
Z
X
Y
Z
×
×
×
×
×
×

下記は、試しに死守のホールで全てのINDEXをカメラタイプ1に変更し、プレイヤーが画面に収まるように一部を変更した時の画面である。
カメラが動かないので、プレイヤーの移動距離が長い場所では、画面全体を引いて、プレイヤーが画面に収まるように調整している。



このモードの長所としては、初代バイオ,2,3の雰囲気を出すことができることであるが、短所としては、区切りが広いところでは、カメラを引いてプレイヤーを画面に収めなくてはならないことである。

下記のように移動できる範囲が広い場合(カメラインデックスの区切りが広い場合)は、カメラタイプ1を使用する
場合は、カメラを引いて全体を表示しないといけない。この結果、プレイヤーが小さくなってしまう。、

リメイクされたバイオハザード0および1でも、初代を踏襲しているため、このカメラ固定をよく使っている。(よく見ると何気に微妙に動いていたりする)

またカメラの区切りが細かいため、様々なアングルでプレイヤーを撮影している。
つまり、まるで映画のような細かいカット割りで「先が見えない恐怖」を作り出し、かつ細かなビジュアルで臨場感を出している。

下記のように初代バイオとバイオ0のリメイク版は、キャラクターの移動範囲細かく区切られているため、少し進むと次
のカメラアングルに切り替わることができる。、

しかし、残念ながらアウトプレイクでは、バイオ0およびリメイクされた初代バイオほど細かいカット割りには適していない。
初代およびバイオ0ハ、細かくカメラのINDEXが区切られるているため、少し進むと、新たなカメラ割りができるが、アウトブレイクはそこまで細かく区切られていないからである。

カメラタイプ2  カメラレール移動モード

このアウトブレイクシリーズで最もオーソドックスに使用されているモードであり、プレイヤーの動きにあわせてカメラが移動するモードである。
カメラ位置1からカメラ焦点1にあわせて、プレイヤーが移動するとカメラ位置2からカメラ焦点2に移動する。

カメラ
位置1
カメラ
位置2
焦点
位置1
焦点
位置2
X
Y
Z
X
Y
Z
X
Y
Z
X
Y
Z

この動作をアウトブレイクで導入したため、初代バイオ,2,3とは異なるダイナミックなカメラの動きが可能となった。
しかし、どちらかというと、カメラの視点は上から下を見下ろすことが多く、かつネットワークプレイを前提としているためか、プレイヤーを中心に引きが多いため、迫力に欠けることと単調さを否めないモードでもある。

このモードを駆使し、ダイナミックにカメラを動かし、プレイヤーを中心に迫力の追求を出すことが可能であるが、プレイヤーが画面から見えなくなる「見切り」の問題が生じたり、カメラが壁に埋没してしまうなどトラブルも多くなるため、調整が難しいともいえる。

最もオーソドックスたが最も難しく、かつアウトブレイクらしさを追求しつつ、大胆なアレンジが可能なモードともいえる。

カメラタイプ3  カメラパンモード

このモードは、カメラの移動はしないが、プレイヤーの動きに合わせて焦点1と焦点2の間をカメラが向きを変えるモードである。(横パンや縦パン(ティルト))
つまり、カメラ位置1から焦点1と焦点2の間をカメラが振り向く感じとなる。

カメラ
位置1
カメラ
位置2
焦点
位置1
焦点
位置2
X
Y
Z
X
Y
Z
X
Y
Z
X
Y
Z
×
×
×

カメラタイプ3を使用した場合は、カメラ位置2の値は無視される。
カメラタイプ3を使用している箇所は、カメラタイプ2よりかなり少ないが、何気に使用されているところがある。
カメラタイプ2で、カメラ位置2の値をカメラ位置1と同じ値にすることによって、カメラタイプ3と同じ動きにしている箇所もあるため、かなり混乱したが、恐らく担当者の好みや調整中に結局は同じになってしまった部分もあると思われる。

下記は、デフォルトの設定であり、カメラタイプ2であ
る。
プレイヤーが移動すると、カメラ位置1からカメラ2位置
の間で移動し、かつカメラ焦点1からカメラ焦点2へ移動
する。
下記は、左の座標は同じであるが、カメラタイプ2を3に
変更した結果である。
カメラが移動せずに、カメラ焦点1からカメラ焦点2の間
を振り向く感じで動作していることがわかる。

カメラタイプ4と9 プレイヤー中心モード

常にプレイヤーを画面の中心に置いて。カメラ位置1とカメラ位置2の間でプレイヤーを追いかけるような感じで移動するモードである。
ただし、焦点位置1のZ値が有効であり、カメラの焦点の高さは調整が可能である。

カメラタイプ4の場合
カメラ
位置1
カメラ
位置2
焦点
位置1
焦点
位置2
X
Y
Z
X
Y
Z
X
Y
Z
X
Y
Z
×
×
×
×
×

下記は、試しに死守のホールを全てカメラタイプ4にしてみたものである。


それに対し、カメラタイプ9のプレイヤー中心モード2は、カメラ焦点は無効であり、常にプレイヤーの胸のあたりを中心に追いかけるモードである。
カメラタイプ9の場合
カメラ
位置1
カメラ
位置2
焦点
位置1
焦点
位置2
X
Y
Z
X
Y
Z
X
Y
Z
X
Y
Z
×
×
×
×
×
×

下記は、試しに死守のホールを全てカメラタイプ9にしてみたものである。



カメラタイプ9は、カメラタイプ4とは異なり、焦点の高さも無効なため、常にプレイヤーはカメラで撮影する画面に収まる。
つまり、プレイヤーが画面に収まらず「見切れてしまう」問題が発生しない。
このため、かなり便利なモードでもある。
たたし、カメラ位置が障害物(壁や床や車などの物体)に埋もれてしまうことがありがちなため、使うにしても十分な調整が必要である。


また、このモードは、どのシナリオのどの部分で使用されているかは不明であり、恐らく未使用か目立たない場所で使われていると思われる。


下記は、カメラタイプ4である。
プレイヤーのケビンは常に画面の中心にいるが高さは変
わらない。ハシゴを昇り降りしてもカメラの焦点の高さ
に変化はしていない。
つまりカメラは上下にパンしない。
下記は、カメラタイプ9である。
プレイヤーのケビンは常に画面の中心にいるし、焦点の
高さも常にケビンの胸あたりである。ハシゴを昇り降り
するとそれに合わせてカメラの焦点は常にケビンの胸あ
たりであるため、カメラが上下にパンしている。


上記以外のカメラタイプ5,6,7,8は、まだ段階的に調査をしている状態であるので説明の確定はできない。
他にも不明なデータ(特に座標)があるため、それと絡む部分もあると考えられる。
つまり、更なる不明なデータの解析もしていかないと、自由自在にカメラワークを変更することができないのである。

まだまだ途中であり、解決できていない問題もあるが、特定できた様々なカメラタイプを使用して、どのようなことができるかを実験してみた。
目標は、今まで見たこともないようなカメラワークを生み出すことと、戦闘での迫力を感じるアングルを作り出すことである。

それをするにあたり、人気のある「対峙3」のボス戦で色々と試して調整をしていこうと考え、更なるノウハウを蓄積し、そこで発生する新たな問題を見つけていき、それをどのような方法で解決していくかを調査する必要があった。

下記は、対峙3で上記のカメラタイプ1,2,3,4および9を試した内容である。
実験のポイントとして、様々なカメラタイプで、プレイヤーが画面に収まっているか。武器のエフェクト(炎、爆発、煙など)が正しく表示されるか。スペシャルアクションが画面に収まるか、ダメージを受けて飛ばされた時などに問題が生じないか、様々なカメラアングルとカメラタイプを変更し、逆アングルや逆光、ハレーションなどで問題がないかを確認し、問題が生じる場合は、どのような解決方法をとれば良いのかを調査するための動画です。




ここで見つかった問題も含めて、次の段階に進む時が来たのかもしれません。

次章に続く