FILE2 咆哮 デモ


”市民の皆様へ”?
あそこは…動物園の裏門ね
救助がくるなら、急がなきゃ…
いやな予感がするけど…
あの中を行くしかないみたい
せっかくだ…楽しむとするか
歓迎されているとは思えんが…
やむを得まい
デートの下調べには…ならないか
ゾンビがいない事を祈ろう…
狩るか、狩られるか…だな
エサになるのだけは勘弁よ
お願い…無事に通らせて
次はせめて
晴れた日曜に来たいわ
”避難勧告”
”動物園正面から
トラムターミナルに向かってください”
”4時間ごとに
救助ヘリコプターを派遣します”


この街は、まあ嫌いじゃない
俺みたいなロクデナシでも
けっこう楽しくやっていけてる
だけど、それももう終わりだな
あんな風になっちまっちゃあ…
人生、どこにでも「戦場」はある
…俺の親父の口癖だった
軍人としての数十年を終え
そんな言葉も忘れかけていた
こいつは、どうだ…?
あのジャングルより、よほどひどい
それで助かったかって?
とんでもない!
あの時ほど自分の運の無さを
恨んだことはないね!
もっとも…その後も当分の間
ロクなめにあわなかったけど
自分には幸いにして
医師としての心得がある
特別な愛国心などなくとも
人助けのひとつくらい出来る
だが、それにも限界はあるのだ…
その有様を前に、何がやれたというのか
ひと仕事終えて
すっかり勝ち誇った気分だった
俺らしくもない油断だ
こんな時に限って
救えない結末が待っている
俺の予感は外れない
…いまいましいほどに
その日、何度目かの
「最悪ね」をつぶやいた
そして何度目かの「助かったわ」も…
いったい…何回繰り返せば
逃れられるの?
この地獄のような仕打ちから…
今思えば…何も自分では
解決していなかった
流されるままに
道の続くままに歩いただけ
その先に安息なんて
そう都合よく待ってちゃくれない
何度も…思い知ったはずなのに
眠りたい…
疲れきった体を横たえて
もう少しの我慢で
ささやかな望みはかなう
そんな思いをあざ笑う光景だった
たとえ硬く目を閉じても
かき消すことは出来ない…


…救援部隊の活動が続いていますが
作業は難航しています

派遣されたヘリコプターも
事故により炎上

事態の収拾は
さらに困難になると予想され…